逆さまの傘で雨を集めた
雨は、世界を濡らす。
しかし、濡らされないように傘を差した誰か。
屋内に居て、雨の音すら聞こえない誰か。
雨を知らない世界の住人も居るでしょうか。
雨は全てを濡らしてはくれない。
雨、雨、雨。
傘では守りきれないから、合羽を手に入れて、長靴を履いて、それでも歩いてゆくあなた。
私には幾らか不恰好に見えるわ。
それでも笑うあなた、それが何より美しい。
そう思えば思うほど、私は淀んでゆくのです。
花びらを散らして世界を濡らす雨。
今日が今日でありますように。
昨日はいつからか消滅してしまって、夜の中を探す日々です。
誰かの心に触れれば、私が見えると思っていた。
相対的な思考はいつからか染み付いた通過儀礼。
私はあなたが知りたいと、あなたと話したいとよく歌うけれど、全ては自分をよりよく見るためだったし、私は私のことを知りたかった、私と話がして見たかった。
世界をよりよく見る方法は、何も知らないことだったのかもしれない。
あめ、あめ、あめ。
世界を循環するその雨の中に、私が隠れていると思った。
誰かの一部であったものが雨になって世界を巡る物語。
私はそれを飲み込んで、世界になろうとしたのかもしれない。
消えていった誰かのことを取り込もうとしたのかもしれない。
それに意味はないのかもしれない。
ねぇ、どう思う?
雨は次第に強くなってゆくようです。