アオノコキュウキ

言葉を綴ります。あしからず。

苦しみの殺し方

 

はじまりはいつだったか

思い返してみる

 

どこから来たのか

そもそも何故来たのか

何か明確な理由があったのか

終わりはどこにあって

その終わりに際して

何をどうするべきなのか

私は未だ、解決の糸口を見出せないまま

日々を空費する。

 

 

はじまりはいつだったか

想像する

初めて誰かを求めた時

それはどんな形であったか

想像する

 

 

家族に何一つ期待出来ないと感じた時

私は、その一個団体の中で

どのような役割を担うのかを考えた

一つの集団の中において

その集団が崩れないように

空気になるのである

その怒声が、その悲鳴が

その破裂音が、そのゴミ、ゴミ、ゴミががが

グラスが割れた瞬間にゴミになるように

ペットボトルが中身を失った瞬間にゴミになるように

私が、ゴミになってしまう境界線は

あの人たちがゴミになってしまう瞬間は

きっと、そこら辺に転がっている

些細な可能性

その時私は空気になるしかなかった

眠ったフリをしたまま

一切が過ぎ去るのを待った

 

私がある一定の年齢に達するまで

多くのことに対して生じた拒絶は

あの家で作られた

それは今も私を形成する

私の形にぴったりと重なるようにして

私を私たらしめている

彼の名前をなんと名付けよう

ゴミの中で繋いだ手も確かにあったはずなのに

私自身がゴミなのだ

あなたも誰も彼も

ゴミしかない世界で

愛の形を思い出せないのは

そもそも無かったからなのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

はじまりはいつだったか

空想する

期待していたからなのか

そもそも期待していなかったからなのか

私の中の猜疑心は

一体いつから

 

 

 

 

大人と子供

その言葉の裏に隠された呪いのような意味合い

付き従うことでしか

存在を肯定されない未完の形

私は一体いつからいつまで

揺蕩っている間中

私は不完全であることで

存在を肯定されるのだ

 

では、一体いつ

その個体はそれぞれ完全になるのだろうか

答えは見えない、誰も教えてくれない

あの人達に問い質したところで

返ってくる答えは矛盾ばかり

正しくあって欲しかった

間違いではないと思い込ませて欲しかった

なんにも無かった

空っぽ、空っぽ、空っぽ

私なんかに謝らないでほしかった

せめて、私が全て間違っていると

シラを切り通して欲しかった

なんだその顔は

先生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はその時も空気だった

空気のはずなのに机も椅子も教科書も

人一人分用意され

そして、その箱の外に出された

私は世界を欠席するしか無かった

金銭や存在が奪われたとしても

私は絵を描いていたかった

私は歌を歌っていたかった

私はただ愛されたかった

誰かの笑い声を嫌いになんて

なりたくなかった

思い通りにいかない日々がどれだけ連なっても

それらを愛さなければいけないらしい

他人の経験則の中に無い理不尽も

誰かの言葉の中で

美しく象られてしまうのが

許せなかった

許したくなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

はじまりはいつだったか

答え合わせをする

君が好きだよと言葉に出来ないから

靴箱の中に忍ばせたハートマーク

言葉なんてなくてもよかったから

言葉で埋め尽くす

言葉が飽和した時に

何もかも壊れてしまったとして

それでも伝わる何かを信じたかった

信じさせて欲しかった

君は居ない

居ない

 

 

 

出来るだけ綺麗な言葉を選んで

整合性の無いままでは見透かされてしまうから

蓄えた知識と相関図

理路整然と組み立てた

否定されない為の塔

YESしか許さない問い掛けは

誰かにとって

腫れ物でしかないということに気付いたのは

ほとんど失った後だった

君は居ない

居なくなった

 

 

 

 

 

 

 

はじまりはいつだったか

考える

全て自分の選択のせいだと気付く

誰のせいにも出来ないまま

連なったここまでの道のりを思う

吐き気がする

耐えられない

存在はどこまで行っても透明で

存在はどこまで行っても不透明で

それを均一に揃えることは出来なくて

誰かを愛す理由が

誰かを愛せない理由になる

誰かを幸せにする理由が

誰かを不幸にしてしまう

誰かを求める理由が

誰かを手放す理由になる

どうして同じになれないのか

考える、考える、考える

耐えられない

存在の耐えられない透明さ

はじまりはいつだったか考える

その段差を登らなければ

僕は、いつまでも平坦な世界にいられた

ここがもし地獄なら

それを生み出したのは私

 

 

 

 

 

嘘のない

数式の世界は誠実だった

一タス一ガ二ニナッテ

二ヒク一ガ一ニナレナイノハ

どうして

何か、不具合が起きていた

私の心はこの口から出た瞬間には

違うものに変わったか、或いは死んでしまったか

世界の終わりはこの口だった

 

この世界にある

私だけが空っぽで

私だけが空白で

解がわからない

 

私以外の全てがわかれば

総数からそれを引けば

私がわかるようになるかもしれない

 

全ての苦しみを集めたら

その苦しみに対しての抗体が出来れば

その苦しみはもう

罹ることのない病だ

治せないわけがない

そんなのもう

存在しない病だ

私は苦しみの殺し方を想像する

はじまりはいつだったか

 

 

 

心が不特定多数

悲しみも不特定多数

苦しみも不特定多数

喜びも不特定多数

 

もしも心が一つなら

一つの心を共有して全ての人類が繋がるのなら

その一つの心の為に全ての人類の経験則を統合出来るのなら

その一つの心が全ての身体、所謂"容れ物"の為に全ての経験則を差し出せるなら

そこから割り出される最適解を

全ての人が共有出来るなら

一つになれるなら

もう、苦しみなんてなくなるはずなのに

 

私は私で居たかった

私はあなたで居て欲しかった

私は私なんか愛さないで欲しかった

私はそれでも愛して欲しかった

世界は一つになんてなれない

苦しみは殺せなかった

その苦しみも

私の姿をしていたから

あなたの姿をしていたから

いつかリクノコトウから

誰かの呼吸を頼りにして

私は幾つかのはじまりから

たった一つの終わりを迎えるのだろう。

 

 

 

 

 

とうめいなからっぽ

私は空っぽを知っている。